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白虎神王

Author:白虎神王

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~第2幕~
豪快な笑い声たちが頭の中に響き渡る
何の騒ぎだ
うるさくて休む事もできない

私は重い瞼をゆっくりと開いた
焚き火の周りでは荒々しい風貌の男たちが酒を飲んで騒いでいた

手に持った銃を丁寧に磨いていた小柄な男が私に気がついたようである
『兄貴 目が覚めたようです』
 


 
兄貴と呼ばれた大きな男が肉を頬張りながら振り向いた
『おうキュービ 腹減ってないか?』

その声の主は昔一緒に旅をした事のあるマテンローという男だった
旅と言っても
まだ幼かった頃に渓谷にある祠で蛇やコウモリを倒しに行った程度である

私の口から出た言葉は、その心と逆であった
『いや 大丈夫だ 腹は満たされている』
その直後、私の腹が正直な返事をしてしまっていた

その音を聞いてマテンローが大きく笑い出した
『さすがのキュービも 腹の虫には勝てないか』

焚き火を囲んでいる男たちも愉快に笑い出した
人に笑われるのが嫌いな私だが、その笑い声は何故か心地よいものだった

静かに銃を愛でていたロウガが突然その笑い声を制止した
『兄貴 外に客人が来たようです』
洞穴の外では無数の鋭い目がこちらを睨んでいた
怒りに満ちた唸り声とともに

私が錫杖を手にしようとした時
マテンローが落ち着いた口調でこう言った
『ゆっくり肉でも食ってな こっちで片付けておくぜ』
マテンローとロウガは楽しむように洞穴の外へと出て行った

私の横では一心不乱に肉にかぶりついている青年がいた
『あなたは行かないのですか? ダ・ニ・エ・ル・さん』

ダニエルは肉と格闘しながら返事をした
『おそらく大丈夫でしょう』
そう短く言い終えると再び肉を食べ始めた


洞穴の外ではマテンローとロウガの前で小さな犬が牙を剥いて激しく唸っている
その犬の額には、洞穴の外で死んでいる頭領と同じ三日月の傷があった

小さい体を小刻みに震わせながら、マテンローへと近づいていく
体こそ小さいが立派に頭領の魂を引き継いでいる
そんな姿であった

周りの野犬たちも、その後に続くように近づいてくる
一匹の野犬がマテンローへと飛びかかった
それを切欠に次々と襲い掛かってくる
黒く巨大な津波のようだ

マテンローが動くたびに、その黒い波が赤い雫へと変わっていく

暫くすると外では再び静寂が訪れていた
洞穴の中でも数体の野犬が口を開けたまま死んでいる
ダニエルは衰弱して動けない私を気遣って護ってくれていたようだった

外では雨がいつの間にか止んでいて、綺麗な月が浮かんでいた
マテンローは小さな亡骸を優しく抱きかかえ天を見上げた
『まぎれもなく こいつも戦士だった 俺の中で生き続けるだろう』

ダニエルが驚いた表情で言い放った
『まさか!? 食べるつもりでは…』

私は堪えられなくなり、久しぶりに大きな声で笑った
『マテンローなら食いそうだ』
月明かりの中、楽しそうな笑い声たちがいつまでも躍っていた
 
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

ダニエル鍋 ・ 陽炎の章 | 20:40:12 | Trackback(0) | Comments(0)
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